英文学―19世紀イギリス小説を中心にー

 英文学は、広くは英語で書かれた文学すべてを指す場合もありますが、一般的には英国、すなわちイギリスの文学作品を意味します。古くは古英語で書かれた英雄叙事詩『ベーオウルフ』から中世にはジェフリー・チョーサーの『カンタベリ物語』、そして16世紀から17世紀になると『マクベス』『リア王』などで知られる文豪シェイクスピア、『失楽園』のミルトンなどが登場します。18世紀後半から19世紀にかけてはいわゆる「ロマン派」の時代が到来し、ウィリアム・ワーズワス、ジョン・キーツ、ジョージ・ゴードン・バイロンなど優れた詩人が次々と英文学の歴史に名を連ねます。
 18世紀はまた、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』により、最初の近代小説が誕生した時代でもあります。続く19世紀は、前世紀に起こった産業革命の恩恵を享受した時代で、豊かで安定した社会は文化・科学の進展を促しました。多くの小説家が現代にも読み継がれる偉大な作品を生み出しました。ジェイン・オースティン、チャールズ・ディケンズ、ギャスケル夫人、ブロンテ姉妹、ジョージ・エリオット、トマス・ハーディなど枚挙に暇がありません。19世紀から20世紀初頭にかけては「児童文学の黄金時代」とも呼ばれ、『不思議の国のアリス』や『ピーター・パンとウェンディ』など児童文学の不朽の名作が生まれています。
 20世紀に入ると、登場人物の心理を直接的に表現しようとする「意識の流れ」という手法を用いたヴァージニア・ウルフ、ジェイムズ・ジョイスなどの小説家が登場します。後半には、宗主国ではなく植民地の視点から様々な作品を読み直すポストコロニアリズムや、女性解放運動と相まってフェミニズム批評が盛んになるなど、文学をめぐる状況は今も変化し続けています。
 こうした長い歴史を持つ英文学の中でも、わたしは19世紀イギリスの小説を専門として研究しています。特にブロンテ姉妹の長女、シャーロット・ブロンテ (Charlotte Brontё, 1816-55) の作品を中心に研究してきました。
 また、作品にはそれを描いた作者、また作者が生きた時代や文化が何らかの形で反映されており、それらも含めて考えることで多角的に作品を捉えることができると考えています。そのため、19世紀イギリス、ヴィクトリア朝の文化研究についても強い関心をもって取り組んでいます。

 最近の主な論文には次のようなものがあります。

(1) “Retelling His Story: A Study on the Narrator William Crimsworth.”『名古屋女子大学紀要(人文・社会編)』第60号、2015、 pp. 323-32.
(2) “Re-Reading The Professor from a Consumer Culture Perspective.” Moving Around: People, Things and Practices in Consumer Culture (History of Consumer Culture 2014 Conference Proceedings), 2015, pp. 165-70.
(3) 「変容するアリス ― 視覚表現を通してヒロインの変化を読み解く ―」『名古屋女子大学紀要(人文・社会編)』第59号、2016、 pp. 185-97.
(4) 「二人は何を見つめていたか―ギャスケルとブロンテの「眼差し」を考える」『ギャスケル論集』第26号、2016、 pp.73-85.
(5) 「都合のよい真実―『教授』における科学的観察」『ブロンテ・スタディーズ』第6巻第2号、2016、 pp. 129-44.
(6) 「語り手への道のり―ジェイン・エアの描いた軌跡」『英文学研究』支部統合号第10巻、日本英文学会『中国四国英文学研究』第14号、2018、 pp. 1-10 (257-66).
(7) 「『ジェイン・エア』におけるヴィジュアリティとその効果―ビューイックの謎を解く―」『英文学研究』支部統合号第12巻、日本英文学会『東北英文学研究』第10号、2020、 pp. 1-9 (61-69).
(8) 「物語を紡ぐ光と影―『ヴィレット』におけるヒロインの描き方―」『英文学研究』支部統合号第13巻、日本英文学会『東北英文学研究』第11号、2021、 pp. 1-10 (11-20).
(9) 「語りとヴィジュアリティ―シャーロット・ブロンテの一人称小説の軌跡―」 博士論文(名古屋大学大学院国際言語文化研究科)、2021.

その他の業績については、Researchmap (https://researchmap.jp/sugimura1027) をご覧ください。


(研究者)
杉村 藍(鳥取大学地域学部国際地域文化コース)
E-mail: sugimura@tottori-u.ac.jp